NVIDIAのCUDAを前提としたソフトウェアを、Windows上のAMD Radeonで実行するオープンソースプロジェクト「CUDA-for-AMD-Windows」が公開された。現時点では対応範囲が限定された実験的な取り組みだが、Radeon RX 9060 XTを使い、CUDAライブラリを変更せずに機械学習処理を最後まで実行することに成功している。
このプロジェクトはCUDAそのものをAMD GPUへ移植するものではない。かつてAMDも開発を支援していたCUDA互換レイヤー「ZLUDA」と、Windows向けROCm/HIP SDKをPowerShellスクリプトで組み合わせ、CUDAから発行された処理をAMD側のライブラリへ橋渡しする。
開発者はCUDA Driver APIに加え、線形代数のcuBLAS、疎行列を扱うcuSPARSE、FFT処理のcuFFTをAMD環境へマッピング。実証試験では、CUDA向けのコードを変更せず、約220万パラメータの強化学習ネットワークをRadeon RX 9060 XTで学習させた。
AMDは現在、Radeon RX 7000/9000シリーズ向けにWindows版ROCmとPyTorchを正式サポートしている。それでもCUDA専用に作られた古いソフトや研究用ツール、GitHub上の実験的なAIプロジェクトは多く、Radeonユーザーが利用できないケースは依然として少なくない。CUDA-for-AMD-Windowsは、その隙間を翻訳レイヤーで埋めようとするものだ。
もっとも、CUDA環境がそのままRadeonで使えるようになったわけではない。現在公式に確認されているGPUはRX 9060 XTのみで、AI用途で重要なcuDNN、TensorRT、NCCLなどにはまだ対応していない。ZLUDA自体も現在は商用プロジェクトではなく、継続性や互換性を保証できる段階にはない。
性能面にも翻訳処理による負荷が残る。公開された強化学習テストでは、標準的なZLUDAとHIP SDKを組み合わせた環境で1秒あたり1万3,278ステップを記録したが、ネイティブ環境との包括的な性能比較が済んでいるわけではない。
それでも、CUDA専用アプリケーションをWindows上のRadeonで実行できた意味は大きい。AIやGPGPU用途ではCUDAのソフトウェア資産がGeForceを選ぶ大きな理由になってきたが、その壁の一部がソフトウェア変換で越えられることを実証した。実用品になるにはまだ距離があるものの、RadeonのAI用途を広げる技術として今後の発展が注目される。
管理人コメント
RadeonでCUDA専用ソフトが動くなら面白いですが、現状は「CUDAの壁が崩壊!」と叫ぶには早すぎます。RX 9060 XTだけの実証で、cuDNNやTensorRTも未対応。それでもWindows+Radeonだけでここまで到達したのは大きな一歩です。AI用途でGeForce一択になりがちな状況へ、少しずつ横道が掘られ始めました。








